斑尾高原の植物・・・あるじのガイド

 

斑尾山を頂点とし、東南の山麓が豊田村、東側が秋津、飯山、大川地区となり、飯山盆地の海抜は平均320メートルとすれば山頂は1381,8メートル、その中間900メートルから1000メートルが高原地帯で最も開発が進んだ所となっています。

斑尾山の植物は、低山帯(標高500m~1500m)の植物で占められていて、代表的なものはブナで、ミズナラ、カエデ、シラカンバ、クリ、サクラ、などが混じっています。

斑尾山の木は伐採が繰り返され結果、ブナの大樹はほとんど見られないが、ブナの幼木は山麓から山頂まで見られています。

現在も山頂から高原地帯にかけブナ林の他、周辺の林がコシノカンアオイを育てギフチョウの生息を可能にしています。

ブナの他、ミズナラが多くその中にイタヤカエデ、ウリハダカエデ、ホウノキ、サワグルミなどが大樹に成長しています。

伐採の後に植林も盛んで、中腹から山麓にかけてはカラマツにより大部分が占められ斑尾本来の植生ではないように思われ、植林の多くはカラマツで、次いでスギが多く、山麓にはアカマツも見られます。

伐採後、植林されず放置された所には、陽地植物であるシラカンバの侵入が見られ各地にシラカンバが多く、春や秋にその白さが良く目立ちます。

斑尾山系での植物の特徴は、亜高山帯(海抜1500~2500m)植物とされている種類が多く見られること。植林地以外に針葉樹林帯が無いのに、ゴゼンタチバナのような林床植物があること。標高800m付近に数は少ないがダケカンバがありシラカンバ、ウダイカンバ、ヤエガワカンバが混生している。また、ユキツバキが北と北東斜面を中心に、林床に多く見られるのも多雪地帯の裏日本型の植生を物語っていると思われます。

斑尾山腹の湿原や湿性草原にはカキツバタ、ノハナショウブの群生も見られます。

 

斑尾山麓がリゾート開発されるにあたり、開発による植生の変化や自然破壊が懸念され現状を詳細に調査し今後に備え比較する基準や郷土の自然を後世に伝える目的で、1971年から3年をかけ、飯水教育委員会創立90周年の記念事業の一つとして、自然調査特別委員会の方々が貴重な調査結果をまとめています。

この時の調査では、シダ植物 7科。裸子植物 5科。双子葉植物、古生花被植物 62科。後生花被植物 24科。単子葉植物 12科。の110科506種の植物が確認されていて、中ではキク科の植物(ヒメジョオン・フキ・ヨモギ・ハンゴンソウ・ノアザミ・サワヒヨドリ・ヨメナ・ヤナギタンポポなど)が最も多く、次にバラ科(ワレモコウ・ヘビイチゴ・ナナカマド・シモツケソウ・ウワミズザクラ・アズキナシ・エゾヤマザクラなど)次にシソ科(ウツボグサ・ジャコウソウ・ツル二ガグサ・ハッカなど)となって平地の植物と同じような傾向であり、又この中には、11科24種の帰化植物が含まれていました。リゾートである斑尾高原ではガーデニング行為は重要な要素でありますが、しかし、これにより外来、または観賞用の花が高原に帰化していくことが問題でもあります。

この調査以降、斑尾山麓での本格的自然調査は行われておらず、植生の変化や絶滅に近い植物、多くの帰化植物が入り込んでいると思われます。2005年春、関田山脈をつなぐ「信越トレイル」がオープンしますが、これにおいて植物の調査も行われるので植生の変化が解明されるのを期待したいところです

 

八坊塚在住の小澤 氏の調査によれば、2003年7月現在として、被子植物・双子葉植物 72科、単子葉植物 11科、裸子植物 1科で84科、322種が確認されています。

 

ブナ林について ( ブナ=別名 シロブナ・ソバグリ)

斑尾山では600m前後より、刈り払った後よりの幼木が多く、スキー場には切り残されたブナの大木も見られます。山頂付近のブナは30~40cmくらいが主で見事なブナ林になっているが、ブナの寿命は400~500年といわれています。6~7年に一度雪が花粉で黄色くなるほどの花を咲かせ、大量の実を落とし、翌年の春には地面を埋め尽くすほどの芽を出します。何万と出る芽の中で巨木として残るのは数本といわれています。開花するほどの木になるまで最低でも40~50年、結実するには最低60~80年かかります。

ブナ林を始めとする落葉広葉樹林は、山の貯水池とも呼ばれ、針葉樹林の5倍にも及ぶ水資源を涵養するといわれ、「ブナの大木は、水田1反歩(約1000平米)8~10表のコメ生産の水を養う」ともされています。

 

ブナの繁殖・・・ブナは同じ固体が雌花と雄花を同時に咲かせる「雌雄同株」で健全な種子を付けるには、異なる個体から受粉する「他家受粉」が必要で、花を咲かせても、他家受粉出来ず自家受粉してしまったり、虫による害に遭うなどして健全に結実出来ない場合が多い。開花した雌花の総数に対して健全な種子の割合が30~40%を超えると、その年は豊作とされていて、ブナは数年のサイクルで種子の豊作と凶作を繰り返す(マスティング現象)が、その仕組みは解明されていないようです。

 

ブナの実は、タンパク質や脂質を豊富に含み栄養が豊富な香実です。タンニンなど

の有害物質を含まないので人間もそのまま食べられる物だから、動物、昆虫にとっては重要な食料です。特にネズミ類は、ブナの豊作年に大量の実を食べ、冬を乗り越え

春の繁殖期を迎えます。このため、豊作年の翌年ネズミが大発生します。ブナは自分たちを増やす為に、実をつけずネズミを減らす為にマスティングを行っているともいわれています。

実は甘く、刺のある小さな「いが」の中に、栗色の三角錐の形をしたそばの実に似た種があることから、「ソバグリ」とも呼ばれています。

ブナ・・・・水分が多く腐りやすく役に立たない木ということから木へんに無と書きブナと読む。

ブナ・山毛欅・・・ケヤキに幹が似ているが葉に毛があるのがブナであることからブナと読む。

 

ホオノキについて

 ホオノキは成長すると高さ20メートル、葉の長さは30センチ、花は花径15センチ程になり何もかも大柄です。かってはホオカシワと呼ばれていたもので、カシワとは食べ物を盛る意味であるので、食器として使われていたことが解ります。

木材部は質が軟らかく細やかなことから、昔は刀の鞘や下駄の歯、鉛筆材やマッチの軸などに利用されています。

薬用には、夏の土用の頃、幹の皮を剥いで日干しにしたものを、腹痛、吐き気、下痢などに1日10~20グラムを煎じて服用する。解熱には成熟した果実を日干しし、1日10~20グラム煎じて服用する他、夏に採取し日干しした葉を粉末にし酢で練ったものをリュウマチ患部に貼る利用法もあります。

ユキツバキについて

飯山市の花として又新潟では県花として知られています。飯水地方では、瑞穂、木島地区には見られないが全地区に見られ特に関田山脈側に多く見られます。斑尾では希望湖周辺や大平峰北側に多く、南にいくほど少なくなり山頂を境として南側にはほとんど見られない。ツバキは本来暖地の植物で寒い冬の越し方に関係があると思われます。ユキツバキのユキは深雪地帯に自生することを意味し、深い雪に適応した植物あることが判ります。低木で弾力性に富み、雪の中で伏せるようになり雪の中の暖かさで冬を越すのが特徴であり、したがって、雪が無かったり少なくて、寒風にさらされる場所には見られなくなっています。

斑尾山は希望湖方向から山頂に近づくほど雪が少なくなる現象があります。これは関田山脈の北側には山が無いことや、西側の妙高山など高い山などによる風の方向などによるものと思われ、ユキツバキの分布も雪の積雪量に関係があると思われます。

薬用には、半開きの花を採って陰干しにしたものをよく刻んで保存しておく。吐血に1日4グラムを煎じ食前に服用したり。滋養強壮や便通を整えるのに、茶さじ1杯に熱湯を注ぎ砂糖を適量加え飲むと良い。また、火傷には粉末をごま油やツバキ油で練って患部に貼る利用法もあります。

 

カンバの類について

カンバの仲間は、寒地性の植物でほとんどが本州中部以北に見られます。シラカンバ(白樺・別名 シラカバ)、ウダイカンバ(鵜松明樺・別名 サイハダカンバ マカバ・マカンバ)、ダケカンバ(岳樺・別名 ソウシカンバ)、ヤエガワカンバ(八重皮樺・別命 コオノオレ)の4種とも斑尾では見られます。ダケカンバは本来、亜高山帯に生育する植物であり、希望湖南側のヤエガワカンバは大きさと共に希少価値の高いものです。現在スキー場の近くに、太さ約30cm 高さ約15mのものが5本確認されています。斑尾山東側1000m付近と希望湖周辺でダケカンバとシラカンバが混生しているが珍しい現象であり、ウダイカンバはスキー場の東中腹と北中腹に多く見られます。

 

ササ タケ類について

万葉文献に「雪国の山に生ずる小竹にして信濃に多し」と記述されているのは、スズタケであり、信濃の枕詞「みすずかる」の語源ともなっているように長野県を代表するササです。しかし、スズタケは県南地方に多く、奥信濃ではほとんど見ることはなく、ほとんどが、チシマザサとクマイザサです。

標高500~600m以下にあり笹もちや笹寿司に使われるのはクマイザサであり、標高600m以上にあり、ネマガリダケと呼ばれているのがチシマザサであります。冬の豪雪で茎の下のほうが曲がっているのでこの様に呼ばれているのでしょう。本来、根曲がり竹と呼ばれているが本来は笹であり、たけの子ではなく「笹の子」であります。斑尾山東側斜面やスキー場内にも多く見られます。5月から6月にかけ目を出すタケノコはアクがなく、山菜の王様とされ、茎は竹細工としてカゴやザルなどにりようされます。クマイザサは葉が出揃うと9枚になる事から名づけられ、葉が広く大きいので、昔から食べ物を包むのに利用されています。

薬用として、両者の葉を集め日干しにしたものを煎じるか、葉が出揃ったばかりの頃は、これをミキサーにかけ利用します。荒れた胃や胃もたれに1日20~30グラムを服用。またこの液でうがいをすれば口臭予防になり、湿疹や痔にはこの液で患部を洗浄すれば効き目があるとされています。

 

ナラの類について

コナラとミズナラがあり、コナラは主に標高700m以下に多く、ミズナラはそれ以上に多い。両種の違いはいろいろあるが、わかり易いのは、葉の表から見ると葉柄がほとんど無く見えるのがミズナラ、葉の表から見て1cm前後の葉柄が見えるのがコナラであります。斑尾一帯はミズナラがおおく、大木もありこの地の代表樹木のひとつであり、葉の上に肉質の赤い玉が着いているのを見かけるが、虫こぶといって虫の巣です。割って中を見ると中心部に小さな虫がいます。

トチノキについて

この種は、トチノキ科 トチノキ属 トチノキの1種1属1種であり、全国に見られるが斑尾山腹(スキー場トチノキコース沿いに大木が残っていて、ブナと並び代表樹木のひとつであったと思われます。

 

ウチダシミヤマシキミについて

ミカン科のミヤマシキミ属ミヤマシキミの型が違うもので、葉の表面の脈が打ち出されたようにへこんでいます。これはあまり見られないものだが、斑尾山中腹や希望湖周辺に多く見られます。

 

ゴゼンタチバナについて

専門書などによれば、本州中部以北の高山帯、亜高山帯の針葉樹林内等に植生とあるが斑尾山では、標高1200m付近のブナ帯に生育しているのが珍しいとされています。

 

アカミノイヌツゲについて

モチノキ科で本州中部以北の高山に植生するものであるが、斑尾山山頂北側に群生しています。高さ3m幹数十センチの大きいものも見られ、ハイイヌツゲとの違いは、実が赤いこと、葉が広くハイイヌツゲのように深緑色でなく鮮緑色で光沢があることであります。

 

希望湖(沼の池)には、1971年当時の調査では、食虫植物のタヌキモ、ヒツジグサも確認されたとありますが、現在は、幾多の改修工事により、水中に植物はほとんど見られなくなっています。

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