斑尾高原とリュードルフィア線(Luehdolfia Line)・・・あるじのガイド

リュードルフィアとは、ギフチョウ属の学名です。

ギフチョウは明治16年、岐阜県益田郡金山町祖師野にて、名和昆虫博物館(岐阜市)の初代館長「名和 靖」氏によって発見された。岐阜県にちなみギフチョウ(岐阜蝶)と名付けられました。

220余りの種類が棲んでいる日本の蝶の中でも、ギフチョウはゼフィルスと並んで最も人気のある蝶であります。

(ゼフィルス=本州では6月から7月にかけて年に一度のみ出現し、卵で越冬するシジミチョウの1群の25種(日本国内では)を蝶の愛好家はゼフィルスまたは略してゼフと呼んでいる。年に一度しか会えないこと、緑色にメタリックに輝く種類が多いことから人気がある。また、高い所にととまる種類が多いため目にする事が少ない。)

ギフチョウ属の蝶は早春まだ残雪が残っている頃、人里近くの雑木林から飛び出す小型で可憐な美しいアゲハチョウ科の蝶であり、そのために春の女神とも呼ばれています。

ギフチョウ属で日本に生息するギフチョウは、ギフチョウとヒメギフチョウの二種で、この二種が日本列島のほぼ中央で住み分け、西日本にギフチョウ、(Luehdorfia japonica)東日本にヒメギフチョウ(Luehdorfia puziloi)が分布しています。

ヒメギフチョウは細かく分けると、北海道に棲むエゾヒメギフチョウ(Luehdorfia puziloi yessoensis)と信州を中心に棲むLuehdorhia puziloi inexpecta)とに分けることが出来る。幼虫の形態が多少違います。

その他に、中国にはシナギフチョウ(Luehdolfia chinensis)オナガギフチョウ(Luehdolfia lonngicaudata)などが棲息している。ロシアのウラジオストック近辺には、エゾヒメギフチョウのルーツではないかと思われるウスリーヒメギフチョウ(Luehdorfia .puziloi.puziloi 原名亜種)が棲息している。しかし、これらは日本のように調査が徹底されておらず、まだ生態など未知の部分が多く、その面での魅力もある蝶であります。

 

ギフチョウとヒメギフチョウの棲息の境界線をリュードルフィアライン(線)と呼んでいます。リュードルフィア線は、両種とも分布しない空白地帯とされているが、斑尾高原は、日本で四箇所しかない両種が混生する地域の一つとして注目されてきています。

ギフチョウ属は、日本に棲息するチョウの中で最も古い形質をもつとされており、交尾に際し雌の腹端に受胎嚢(じゅたいのう)を形成し、雄の腹端に似せることで再交尾を防ぐという特徴があります。

古い形質をもつことと美しいことなどから、詳しく研究、調査から大陸から北周りの経路で日本に侵入したヒメギフチョウからギフチョウが分化したことが解ってきた。そして、分化した原因の一つに食草にあることが言われています。

新潟県の混生地では、ギフチョウがコシノカンアオイを、ヒメギフチョウがウスバサイシンを食べて育つこと確認されているそうです。混生地の一つである姫川渓谷の大網や大所ではコシノカンアオイは生育せず、そのためギフチョウはウスバサイシンを食べ、時には同一の葉に両種の卵が産み付けられるのが確認されています。これは、ギフチョウがヒメギフチョウから分化した証拠の一つとされていて、ヒメギフチョウは成虫になると、約一週間しか生存できない為、見かける機会が少なくなっています。

ギフチョウは、レッドデーターブックにおいて、絶滅危惧Ⅱ類とされています。

 

斑尾高原では

北西斜面にコシノカンアオイが、南東斜面にウスバサイシンが多く生育しているが、ウスバサイシンが一部北西斜面のスキー場の中にも入り込んでいるのを見ます。

一般に後から分化した種の方が環境への適応があるとされていて分布を広げていて、ギフチョウの場合も、コシノカンアオイとの関係から生息域を広げたと考えられます。

斑尾高原での混生は、隔離され残ったヒメギフチョウの分布域にギフチョウが侵入してきたと考えられているようです。

開発によりコシノカンアオイもウスバサイシンも残っている所が限られているが、ここ数年ギフチョウを確認する事が多くなっています。斑尾高原ホテルの西側やペンションの近くのコシノカンアオイに卵が確認されており、高原中央の駐車場でもギフチョウが飛ぶのを確認しています。

こうした文章を載せると、とんでもない族(やから)がアミをもって山にはいってきます。 が斑尾高原では、数十人のレンジャーが巡回パトロールにより監視をし、チョウの生息域を守るための活動を行っています。

食草がある所の近くに、カタクリ、ショウジョウバカマ、スミレ類、ツツジなど紫系の花があるところでは見かけるチャンスがありますが、これは、紫系の花から好んで吸蜜するからであります。

 

また、土路川の下流域には、6月中旬から8月下旬まで「国蝶」として知られているオオムラサキが見られることがあります。標高が高くなると食樹のエノキ(榎=ニレ科)がなくなるため河畔に沿って生育していると考えられます。

斑尾高原で確認される蝶として、食肉蝶のゴイシジミがいます。ゴイシジミは幼虫時、アリマキ(アブラムシ)の幼虫のみつを吸い、成虫になるとアリマキ自体も食べます。これらを含めて、斑尾山周辺では、約80種におよぶ蝶が棲息しているとされています。

カンアオイ=カンアオイの名前の由来は、カンアオイの葉が厚いために寒い冬の間も枯れないことから、寒葵 と呼ばれた。日本には、50~60種類ものカンアオイ類があると言われている。その葉に出来る模様の美しさから、江戸時代には観賞用として盛んに栽培された。斑尾に見られるコシノカンアオイの、コシ は「越」で越後や北陸地方に分布するものである。

ウスバサイシン=「薄葉細辛」は、カンアオイの仲間で、カンアオイより葉がうすく、根茎が細く辛味が強いから名付けられたもので、カンアオイ、サイシン共に根茎は「せき、たん」の薬草としても用いられています。

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